湯浅譲二: 美しいこどものうた
平松英子(sop)
中川賢一(pf)
「レコード芸術」準特選
湯浅譲二 (ライナーノートより)
ここには一九五〇年代後半から、およそ十年間に少しづつ作られた子どものためのうたが集められている。
私は当時からいわば前衛作曲家として、先端的な仕事をして来たが、その一方子どもたちのうたを作るときには、子どもはおとなのように既成概念にまみれていないだけに、子ども向に優しくというよりはむしろ、音楽性の豊かなものをあえて与えて行かなければならない、というのが私の信条だった。
特に親友谷川俊太郎と組んで作ったものには、子どもたちが、うたうというよりはむしろ、聴いて詩と音楽の溶け合った世界として鑑賞できるように、一層高い音楽性を持たせている。
これらの曲が子どもたちだけではなく、おとなたちにも楽しまれるものとなれば幸いに思う。
推薦 畑中良輔 (レコード芸術2004年5月号より)
日本の作曲界の牽引者、充実の極みにある湯浅譲二に、こうした童謡(ないしは童謡風世界)があるとは、ついぞ知らなかった。こうした世界はその昔は山田耕筰の《童謡百曲集》に始まり、中田喜直、團伊玖磨、大中恩に受け継がれたものの、確乎たる世界を築く新しい作曲者として、やっと新実徳英あたりがそこへ眼を向け始めたかな、と思っていた時だけに、驚いた。
第1曲から、それこそ「すばらしい」曲である。新鮮で躍動するリズム。詩へのユニークなアプローチ。詩人は谷川俊太郎のものが多いが、どれひとつをとってもルーティン・ワークとおぼしき駄作がない。またこれを歌ったソプラノの平松英子の見事な表現と共感。それを支えきり、みずからも愉しんでいるような中川賢一のピアノの音の多彩さ。この色合いが実に各曲をわくわくするように彩っている。
平松もごく自然で、わざとらしさがない。ヘンに子供っぽく歌われると興ざめするものだが、彼女は頭のいい歌い手だ。そこのところを十全に心得ている。ただ終わりの方の数曲、彼女の声域より曲のほうが低いので、それまでの彼女の声に馴れた耳には、異質にひびいた。もちろんキチンと歌えてはいるのだが。
曲によって、同じ調性を重ねるのは賢明ではなかったかも。詩人によってこうなったかものかもしれないが。
譜面が出ているのだろうか。あれば私も一冊買いに出かけよう!
録音: 2004年1月、パルテノン多摩小ホール プロデューサー/エンジニア: イシカワカズ